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デザイナーのプライベートブログ。世界から世田谷まで、猫達とのクオリティオブライフ。

キム・カーダシアンKimono撤回。デザイナーとして、気をつけるべき文化のトリセツ【ミナログ】

 

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Cinema Cafe からお借りしました。
 
キム・カーダシアンさん 下着ブランド
『Kimono』名称撤回のニュース
 
良かった良かった。
 
 
 
自身のTwitterでも、一度は「撤回するつもりはない』と
発表し、その後撤回。
 
「私は人の意見に耳を傾け、学ぶ姿勢があります・・・」って
それ、先にお願いします、と思いましたが・・・
 
 
日本からも経産省や
京都市からも正式に文書が
出ていたようです。
 

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着物市長からの文書は、余計に心に響く。
 
 
「着物の市長」として有名な
門川京都市長からの
キム・カーダシアンさんへの文書。
 
結びがとてもエレガントですね。
 
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「着物」をはじめ、
あらゆる日本の文化を守り育ててきた
京都にお越しいただき、
「きもの文化」の神髄に
触れていただければ幸いです。
 
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本物をみていない外国人への
優しくもピリリと「一味」が効いた
お言葉です。
 
あえて「神」髄としたのも、
神事での伝統衣装は
着物だからでしょうか。
 
 今、京都で着物を着て
歩いている外国人の方々も
本当の着物からはやや離れて
微妙ではありますが、
 
京都市長はそこは
「着物を愛する人」と
優しく、くくるけれど、
 
でも「補整下着」としては流石に・・・
ということだったのでしょうね。
 
 
 さて、今回に限らず、
「文化の盗用」は
ファッションやデザインの世界では
議論はつきものです。
 
「Cultural Appropriation 」という表現で
とよく言われます。
 
 
「ファッションに文化盗用はあるか」という記事の中で、
クリエイティブディレクターの
ジェイン・ケロックが、
 

"Design is a mish-mash of different styles,

cultures, ideas - and that's what makes it interesting," she says.

"I really, genuinely don't think that designers look at

other cultures and think 'I'm just going to copy that and

I'm going to rip off that culture'."

 
デザインは、あらゆるスタイルや文化、
アイデアが合わさったもの。
だから面白いのよ。
私は、デザイナーたちが他の文化を見て、
あれをコピーして取り込んでやろう、
なんて考えているとは、全く思えないわね。
 
と語っています。
 
私は各国の文化からインスパイアーされた
クロスカルチャーデザインが専門分野ですので
この言葉には共感し、励まされ、
かつ、身を正す言葉でもあります。
 
なぜなら文化の取り扱いは
諸刃の刃の側面があるから。
 
特に文化は宗教が関わっていることも多く
センシティブなのです。
 
 
わかりやすいのが、アートの世界。
互いの文化に影響を与えながら
作品を生み出してきた歴史があります。
 
浮世絵 x フランスの印象派
有田焼 x マイセン
 
などなど。
 
受け入れられて発展するものと
そうでないものの違い、
 
それは、
「学び」と、「文化」へのレスペクト
ではないかと私は思います。 
そこから、タブーを知るわけですね。
 
 
キム・カーダシアンさんも
Kimonoは神事にも使われる伝統衣装で
肌着をいうなら、
肌襦袢というものがあるということを
知っていたなら
違うブランド名だったかもしれませんよね。
 
私の仕事の一例ですが、
バリ島での撮影で。
チャナンと呼ばれるバリヒンズーのお供えを、
ヘッドピースや、ブーケに使ったことがあります。
この際、インドネシア人のデザインパートナー
にはもちろんのこと、
チャナンを売っている地元の方にも
これが文化的に失礼がないかを確認しました。
 

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私たちがデザインした、バリ島のお供えチャナンを使ったヘッドピース。
 
インドネシアの方々は、
お供えとしては飾りとしての役割なので
問題ないでしょう、と
想像以上に快く受け入れてくださり、
オーダーもしてくださっています。
 
仮に間違っていたとしても、
学ぶ姿勢、を
真摯に相手に伝えることは
重要だと感じました。 
 
 
と、ここまで書いてきて、
ふと気付きました。
 
撤回となったのに、
なんだかスッキリしない理由。
 
今回の騒動、日本人として、
改めて自国の文化を見直すことを
突然つきつけられたのでは?ということ。
 
京都は、これだけ訪日観光客のメッカで、
日本のテーマパークのようなのに、
実は呉服屋さんの生き残りが大変だと聞きます。
 
Kimono = 補正下着という図式に、
日本人だけでなく、世界中の人たちが
違和感を感じ、抗議の書き込みを
しているけれど、
 
当の日本人としては、
着物文化や、日本文化と
実際どう向き合っているの?と
 
私達それぞれが、
自国の文化のトリセツを
問われてしまった気がします。
 
婚礼の時に着物を着たいと願う
若い世代、
日本の着物文化を新しい感性で
取り入れていく動きがある一方、
 
全く着物はおろか、日本文化にも
無関心な若者も多い今。  
 
日本文化、誰が継承し、
どこにいくのか…
 
キム・カーダシアンさんが
Kimono の商標申請を取り下げたのかは
まだわかりませんが、
 
Kimono という言葉を きっかけに
文化の神髄に触れなければいけないのは
まずは日本人の私達かも?!
 
デザイナーとして、表現するなら
なおさらのこと。
 
文化は付け焼き刃で
学べるものではないけれど、
 
身近な文化に足元から
もっと触れて、見て、聞いて、
を意識したいですね。
 
それにしても、新ネームは何になるのでしょうね。   
Kimono を会社名にいれているだけに
商標取り下げ完了か、気になります。